現代供給経済学とは
「現代供給経済学(Modern Supply-Side Economics)」とは、経済の「供給力(モノやサービスを生み出す力)」を強化するために、政府が積極的に「公的投資」を行うべきとする経済政策のアプローチである。
特に、米国のジャネット・イエレン財務長官が、バイデン政権の経済政策を説明するために提唱した言葉として知られている。
従来の供給経済学との違い
この「現代」という言葉が重要なのは、1980年代の「従来の供給経済学(レーガノミクス)」と対比するためである。両者は「供給力を高める」という目的は同じだが、その手段(アプローチ)が根本的に異なる。
比較項目 | 従来の供給経済学 (1980年代) | 現代供給経済学 (イエレン氏提唱) |
主な手段 | 企業や富裕層への減税、規制緩和 | 公的投資(インフラ、教育、R&Dなど) |
政府の役割 | 小さな政府 (市場への介入を減らす) | 賢明な政府 (市場の失敗を是正する) |
期待する効果 | 「トリクルダウン」 (富が上から下へ浸透) | 「ミドルアウト」 (中間層の強化、格差是正) |
主な投資対象 | 民間企業の設備投資 (を促す) | 人的資本、公共インフラ、R&D |
従来の供給経済学は、「企業や富裕層の税金を下げれば、民間投資が活発になり、その恩恵がいずれ(トリクルダウンして)労働者にも及ぶ」と考えた。
しかし、イエレン氏らは、このアプローチは期待されたほどの成長を生み出さず、むしろ経済格差を拡大させたと批判している。
現代供給経済学の主な柱
現代供給経済学は、従来の減税に頼るのではなく、政府が特定の分野に戦略的に投資することで、経済の土台そのものを強化しようとする。主な投資分野は以下の通りである。
1. 労働供給の拡大(人的資本への投資)
経済成長には「労働力」が必要である。働きたくても働けない状況をなくすため、以下のような分野に投資する。
育児支援・介護支援: 女性や家族の労働参加を促す。
教育・職業訓練: 労働者のスキル(生産性)を高める。
有給休暇制度など。
2. 生産性の向上(インフラとR&Dへの投資)
経済全体の効率を高めるために、民間だけでは投資しにくい分野に政府が投資する。
公共インフラ: 道路、橋、港湾、インターネット網の整備。
クリーンエネルギー: 気候変動対策と、新たな産業の創出。
基礎研究(R&D): 将来の技術革新の種をまく。
3. 格差の是正と包摂的成長
投資の恩恵が一部に集中するのではなく、広く中間層や労働者に及ぶことを重視する。気候変動やパンデミックといった「市場の失敗」に対応することも大きな目的である。
概要
要するに、現代供給経済学とは、「減税」ではなく「賢明な政府投資」を通じて、より公平で持続可能な経済成長の基盤(供給力)を作ろうとする考え方である。



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